2015年2月

1

イスラム国の「ネット戦略」

 
最近の話題は、もちろん、イスラム国ではないか。 毎日のようにイスラム国に関するニュースが飛び込んでくる。平和な日本では想像もできない、現実が、いまだ行われていることに、改めて、考えないといけない。

これまでのテロリズムと、今回のイスラム国による邦人人質テロ事件が異なるのは、イスラム国がインターネットやソーシャル・メディアを駆使している点である。イスラム国が日本人二人を人質にとった動画メッセージを掲載したのもネット上であり、ソーシャル・メディア上であった。現代では、テロリストは自分のホームページから情報発信し、YouTubeやFacebook、Twitterなどのソーシャル・メディア上でメッセージや動画を掲載できる。ソーシャル・メディアを介してテロリストと一般市民はグローバルに直接つながることができる。

 イスラム国のネット戦略の中心は、(1)プロパガンダ、(2)リクルート、(3)資金集めである。人質テロを起こし、その人質の動画と政治的メッセージをソーシャル・メディアに掲載するだけで、世界中のメディアや一般市民に向けて自分たちの存在を、宣伝(プロパガンダ)できる。それをメディアが報道することにより、さらにそのメッセージは世界中に拡散され、宣伝効果が増大する。そのプロパガンダにより、世界中からイスラム国に対して共感する若者が中東に集結し、イスラム国の戦闘員となっている現状がある。イスラム国はネットを戦闘員のリクルートの手段として位置づけている。世界各国からテレビ局や新聞社でのジャーナリスト経験を持つ若者がイスラム国に参加し、イスラム国の広報局「フルカーン」に所属して人質の動画を撮影編集し、ネット上で発信している。イスラム国はメディアを活用するためのプロパガンダ機関を持っているのである。さらにイスラム国はそのプロパガンダにより、世界中の支持者からカンパを集め、戦闘資金としている。これらの3つの活動を支えているものが、インターネットでありソーシャル・メディアである。