2019年4月

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欧州連合(EU)は英国が求めていた離脱時期の2回目の延期を認め、新たな期限を10月31日に設定したばかりだ。ところが、早くも複数の高官や外交筋の間から、延期はこれで最後にはならないかもしれないとの声が聞かれ始めた。

EU首脳会議では、最大1年の延期を軸に話し合いが行われたものの、フランスのマクロン大統領が強硬に反対したため、結局10月末に決着した。セルマイヤー欧州委員長官房長は、ブレグジット(英のEU離脱)が何度も先送りされた事態についてツイッターに「#3月29日は4月12日を意味し、4月12日は10月31日を意味する」と投稿。これは今やすっかり色あせたメイ英首相のスローガン「ブレグジットはブレグジットを意味する(EU離脱以外の意味はない)」にちなんだ皮肉とみられる。

では10月31日の後はどうなるのだろうか。

英国の動き次第で再延期が可能性として残される、というのがEU側の見方だ。あるEU高官は「英国が再び国民投票を行うと決めれば、われわれはたとえ6月であってもまた延期するだろう。それが絶対合理的になる」と述べ、これ以上離脱条件は譲れないので、できるのは延期だけだと付け加えた。

別のEU高官も「法的状況からは全ての事態が想定できる。政治の世界で1週間は長い。そしてわれわれには29週間が与えられた。これは非常に長期間であり、多くのことが起こり得る」と説明した。

さらに離脱を延期すれば英国が支払う政治的な代償は大きく跳ね上がるのは間違いない、と複数のEU筋は話す。現状では、再延期をEU加盟27カ国が承認する流れになっているわけでもない。

ただマクロン氏がもうブレグジットを巡る不透明感に終止符を打つべきだと熱心に説いたとはいえ、EU内では合意なきブレグジットを望まないという意見が大勢だ。

ドイツのメルケル首相は繰り返し、秩序だったブレグジットが好ましく、その実現のために我慢強い姿勢を続けると発言している。11日に最善の道はブレグジットの撤回だとの見方を示したトゥスクEU大統領は、実際に英国がそうした方向に心変わりしてほしいと願い、離脱日先送りに尽力していたように見える。